宮城旅行記2007(仙台・田代島)
2007年4月13〜15日


4月13日
東京駅八重洲口22時半。
バスターミナルは各地へ向かう夜行バスがひしめきあっていた。乗るバスは23時 半集合、50分発だから、まだ1時間もある。喫茶店などで時間をつぶしたいが、 軒並み22時半閉店。まだ開いていそうな店を探していたら結局時間が来てしまった。 今回利用するのは、ツアーバスのキラキラ号。以前に名古屋からの帰りに乗った ことがあり、JRの普通運賃を大幅に下回る安さと売りである座席のよさから選んだ。
定刻通りに八重洲を出発し、首都高経由で東北道に入る。普段だと渋滞している はずだが、深夜だけに非常にスムーズ。1時間ほどで最初の休憩地の佐野SAに到着。 都内ではほぼ散ってしまった桜だが、まだいくらか残っている。
佐野を出発後はしばしの眠りにつき、次の休憩地である福島県の安達太良SAには4時頃到着。 今度は桜が満開で、確実に北上してきているのを実感。
安達太良を出ると眠る間もなくバスは5時前に仙台南ICから一般道に出た。到着予定時刻は6時だが 、このままだとかなり早く着きそうだ。そして5時15分に仙台駅到着。 寝る時間を考えると、路線高速バスのようにダイヤ通りに途中で時間調整してくれたほうが有難いが、 安いのだから文句は言えない。


4月14日
最初はこのまま石巻に直行する予定でいたが、時間に余裕があるので3月に開業した 仙台空港線に乗ってみることにした。空港は市内からだいぶ離れている印象があったが、 各駅停車で24分と意外に近い。

仙台空港アクセス線

仙台へは東京からの便がないこともあって、首都圏在住者には最も使う機会がない空港と思われるから、 ぜひこの機会に見ておこうと思ったが、到着してみると空港は開いていない。6時半オープンとのことだが、 石巻に向かうことを考えると待つことはできず、周囲を軽く見てから折り返しの電車で仙台に戻る ことにした。

成田〜仙台線の全日空フォッカー50。数路線でしか就航していないレアな飛行機です。

仙台からは仙石線に乗車。仙石線は地下ホームで他の路線とはかなり離れている。 しかも接続があまりよくないため猛ダッシュする客の姿が目立つなど、大都市らしい光景が 広がっていた。
ここを走る電車は山手線の中古車で、普段乗り慣れているのと同じ電車だが、トイレが設置 されたりとそれなりの改良が施されている。また、東京ではドアが一斉に開くが、ここは 各自開閉ボタンを押してドアを開ける方式。郊外だけかと思いきや仙石線の地下駅も同様で、 慣れないとドアが開くのをつい待ってしまう。
ちなみに、仙台、あおば通の発車メロディーは、さとう宗幸のヒットナンバー「青葉城恋歌」。 往年のヒット曲のひとつくらいの認識しかなかったが、ここでは県民歌級の存在らしく、 こうして発車メロディーになったり、最近も地元のラッパーによるカバー曲が発売されたりもしたとのこと。

仙石線

最初の数駅は地下で、地上に出てからは塩釜付近まで東京近郊のような風景が広がる。 その先の松島海岸あたりでは、右側に変化に富んだ海岸が見えてくる。時間があれば松島なども降りて見たかったが、 数年前に行ったことがあるし寄る時間もないため、車窓からわずかに見えるのを眺めるだけにした。
そして石巻には1時間半ほどで到着。

石ノ森章太郎作品のキャラが迎えてくれる石巻駅

船着き場までのバスに乗ろうとしたが、わずか5分前に行ってしまった。1日3便しかない航路と1時間に1〜2本しかない 電車を連絡するバスなのだから、駅で接続をとるのは常識ではないのだろうか。しかも何十分も前に置いていかれたの なら諦めがつくが、わずか5分前に置いていくのも客を馬鹿にしているとしか言いようがなく、苦情の電話を入れてやりたくなる。
仕方なくタクシーで船着き場に向かい、9時発の船に何とか間に合った。
出発したときはそれほどではなかったが、外洋に出た途端に海は大荒れ。叩き付けるような揺れが何度も襲う。 普段船酔いなどすることないが、これだけひどいと気持ち悪くなりそうだ。
さすがにこの大荒れで定時運航は難しいと思ったら、わずか数分の遅れで40分ほどで田代島・仁斗田港に到着。 やはりここは猫の島。港で早速2匹の猫に迎えられた。


荷物を預けたいので、体育館と市役所支所の入る建物に行くが無人。 目の前を通った老人に聞くと、絶対盗まれないから体育館の入口に置いて行ってもいいと言われた。 確かに老人と港で作業をしている数人以外に人の姿は見当たらないし、逃げようのない小さな島は全体が密室みたいなものだから、 その言葉を信じて勝手に置かせていただいた。
キャンプ場やロッジのある「MANGAあいランド」に行き自転車を借りて島を1周。島を1周する道路は1周6kmで ディズニーランド・シーの周囲を1周するくらいの短さだが、最大標高90m程度の割にアップダウンが非常に激しく、 ところどころで自転車を押さなければならないくらいだった。
途中、猫神社に立ち寄ったり、集落の猫写真を撮ったりしたが、小さい島だけにゆっくり行っても2時間あれば1周できてしまう。
島を一周し終えて港に戻ると、風はいくらか収まったが波は相変わらず高く、帰りの船も激しい揺れは変わらず。 気持ち悪くなる前に早く着かないか気が気でなかったが、何とか石巻まで戻ることができた。


石ノ森萬画館のロッカー

仙台に行く前に石巻市街地をじっくり見ようと思ったが、時間がないので船着場から駅までの間を駆け足で見て回ることにした。
船着場から川沿いを歩いていくと、川の中州にUFOのような形をした建物が特徴の「石ノ森萬画館」がある。 個人的に好きな分野だしじっくり見たかったが、入場料が高いのと中までじっくり見ている時間もないので、入場料なしで見られる部分だけを見た。
また石ノ森萬画館の前には、明治13(1880)年築という日本最古の教会建築で、ビザンチン様式と六角堂のような日本様式の折衷が特徴の 石巻ハリストス正教会もある。ここは平日だと予約すれば内部を見ることもできるそうだが、残念ながら休館日。外の写真だけを撮って駅に向かった。

石巻ハリストス正教会

石巻から仙石線で仙台に向かう。1時間以上の道のりだが、夜行バスと船の疲れから車内で寝てしまい、あっという間に仙台(あおば通)に到着。 今回泊まる宿は、仙台から地下鉄で1駅の五橋駅のそばにあるが、乗らずに歩いて宿に向かい17時半頃到着。
古きよき時代の旅館といった雰囲気の宿だが、安いだけ宿に廊下との仕切りは襖1枚、 しかも部活の合宿の高校生が多数泊まるとのことで、夜がうるさいのではと不安になる。
学生で混む前に風呂を済ませ、夜の仙台を歩いてみることにした。

飲み屋横丁「東一連鎖街」

五橋の宿から歩いて仙台駅を通り過ぎ、一番町、国分町界隈を歩いてみた。いい店があればそこで1杯と思ったが、見知らぬ土地だけに1人で入るには 勇気がいる。個人的には、覗いてみて1人客が多かったり女性だけのグループが多い店であれば安心して入るのだが、外から中の様子が見渡せる店は意外に 少ない。
そんな中で新宿のゴールデン街を彷彿とさせる飲み屋横丁を発見。観光ガイドでも「東一連鎖街」として紹介されている場所で、 古く小さな店が何十軒もひしめき合う飲み屋横丁の独特の雰囲気が面白いが、やはり1人で入るには勇気のいるアンダーグラウンドな雰囲気の店ばかり。 結局歩いてみただけで出てきてしまい、大通りに出てすぐのところにある牛タンの店に入り、定食を食べることにした。

牛たんの店ねぎしの「ねぎし定食」

定食を食べ終えてから地下鉄で宿に戻ると、例の学生グループが到着したようでかなり賑わっていたが、遅くまで騒ぐことなく22時頃には静かになった。 この1日は乗っているか歩いているかのどちらかだったので非常に疲れたのは言うまでもなく、周囲が静まり返ったのと同じくらいに寝てしまった。

4月15日
いつもの癖で5時頃に目が覚めてしまったが、早すぎるのでまた寝て7時に起きた。学生の団体は早くも朝食のようで、次々と1階に下りて行った。 彼らが夜うるさいのではと心配していたが、そんなことは全くなかったし、体育会系だけに礼儀正しく、見知らぬ客にも「おはようございます」 と挨拶をしてくるのは好感が持てる。
朝食後はTVを見てゆっくりし、学生がチェックアウトしてフロントが落ち着いた頃を見計らい、9時前にチェックアウトした。 今日の目的地は特に決めていないが、あまり遠くには行かれないので仙台市内散策をすることにした。
五橋駅で地下鉄1日乗車券を購入し乗車。仙台で一旦降り、コインロッカーに荷物を預けカメラなどだけ持って、再び泉中央行き電車に乗車。 地下鉄だけにトンネル内の様子はどこも一緒。終点まであと3駅の旭ヶ丘で初めて地上が見えた。外は公園で桜がちょうど満開になっていた。 また、次の黒松〜八乙女の間はどこかの風景に良く似ている。左に大きくカーブして地上に出たり、車窓の左側が斜面で右側が平地になっている地形は、 都営三田線の志村坂上〜志村三丁目にそっくり。その先で環八通りと同じような幅の大通りをオーバークロスするところは志村三丁目〜蓮根に似た 風景だけに、黒松か八乙女で降りればうちまで歩いて帰れそうな錯覚を覚えてしまった。

仙台市営地下鉄

終点の泉中央で一旦改札を出るが、首都圏でもよくあるニュータウンの雰囲気で、これといった見どころはなさそうなのですぐに折り返し、 先ほど車窓から桜の見えた旭ヶ丘で降りてみた。
旭ヶ丘駅は台原森林公園の中にあり、改札を出ると右側(西)は森林公園が、左側(東)は住宅街が広がっている。 公園内は満開の桜がところどころにあって、公園を見下ろすよう建つ仙台市科学館からの眺めもなかなかのものだ。

台原森林公園の桜

台原森林公園を少し歩いてから、再び地下鉄の富沢行きに乗車。今度は終点の富沢までまっすぐ行くことに。
北側は地上駅がいくつかあったが、南側は終点の富沢のみ地上駅。反対側の終着駅が高い建物で埋め尽くされたニュータウンだったのに対し、 こちらは静かな住宅街で駅周辺にも農地が多くある。そして、笊川(ざるがわ)という川が流れていて、こちらも桜が満開で非常にきれいだ。
また、ここは市電保存館の最寄り駅。駅より無料送迎車が出ているので、これに乗って行ってみた。
仙台にもかつて路面電車が走っていたという記憶を現在に伝える施設で、地下鉄車庫の一角のわずかなスペースに 歴代の市電3両が展示されている。係員による詳しい説明も聞けて小規模ながらなかなか見ごたえがあった。


富沢駅周辺の笊川の桜

市電保存館を見た後は歩いて富沢駅に戻り、地下鉄で五橋へ。今度は地下鉄を降り、東北大学の間を歩いて 仙台を象徴する川である広瀬川にかかる霊屋橋(おたまやはし)へ向かう。
川はこの付近で大きく蛇行しており、東の岸は垂直の崖、西が砂岸という独特の地形が作り出されている。 そばには伊達政宗をはじめ伊達家代々の霊廟がある瑞鳳殿があるが、入場料が1300円とあまりに高く断念。 手前にあった伊達家菩提寺の瑞鳳寺だけを見て、ここを後にした。

広瀬川

瑞鳳寺を見た後は評定河原橋を渡り、天文台のある西公園に向かう。ここは市中心部一の花見の名所らしく、ちょうど桜祭りの期間が始まったこともあり 花見客で賑わっていた。
ここの露店で何品か食べて仙台駅方面へと歩く。飲み屋横丁など前の晩も歩いた繁華街を通り抜けて駅に着くともう14時。 15時のバス集合まで1時間あるのでもう1ヶ所くらい何か見たいが、1時間で見られそうなところがないのと、雨が降ってきてしまい、 出発までロッテリアで時間をつぶすことにした。
週間予報だと2日とも予報が怪しかったが、昨日は石巻へ移動している間に雨が降ったものの歩くときには上がって行程には影響なし、 今日も歩いている間は降らず最後の最後で降っただけだったから、一応は天候に恵まれたといえる。
そうこうしているうちに集合時間となり、帰りのバスで仙台を後にした。帰りは特に渋滞もなく、寝ていたらあっという間に東京駅に到着。


その他雑記

田代島

石巻沖にある人口約100人の小さな島です。本土からの船は1日3便で、これといった有名な観光地もなく、 典型的な過疎地の離島といった印象の島ですが、実は人よりも猫の数のほうが多いとも言われ、 あちらこちらを猫が我が物顔で闊歩している猫の楽園なのです。
猫の餌付けを見させてもらいましたが、餌をまいた途端に想像を絶するほど猫が集まってきました。
詳しくは猫写真館・田代島篇をご覧下さい。

オフィシャルサイト「ひょっこりひょうたん田代島

東一連鎖街

青葉区一番町の三越仙台店と東一番丁通を隔てた反対側に位置する4本の路地の総称で、路地には長屋風の木造家屋が並び、 飲食店など約70店がひしめいています。戦後すぐ、満州からの引き揚げ者らが住まいとして建てたのが始まりのようで、 東一番丁通に位置していたこと、満州に「連鎖街」と呼ばれる人気商店街があったことから、この名前が付いたそうです。
観光ガイドにも紹介されるなど地元住民も観光客も問わず人気が高いようですが、築60年と老朽化著しく、 残念ながら再開発ビルの建設に伴い近日中の取り壊しが予定されています。 既に、平成19年8月着工と書かれた建築計画のお知らせの看板が立てられていました。
アンダーグラウンドな雰囲気が流れ、独特の味のある飲み屋横丁が姿を消すのは寂しい限りです。 そして、1人で入る勇気がなく見ただけで帰ってきてしまったことを後悔したのは言うまでもありません。

市電保存館



地下鉄の富沢車両基地内に仙台市電の保存館があります。
仙台にもかつて市電が走っていて、最盛期には総営業キロ16kmにも及びましたが、他都市の路面電車同様にモータリゼーションの流れの中で衰退し、 昭和51(1976)年3月31日に惜しまれつつ廃止されました。
ここでは、開業時の車両、昭和20年代の車両、最後の車両の3両が保存展示されています。

瑞鳳殿、瑞鳳寺

仙台藩祖伊達政宗は生前に、自らの死後は遺骸を仙台経ヶ峰に葬ることを遺言して寛永13年(1636年)没し、 政宗の後を継いだ二代藩主伊達忠宗は、その遺言に従い、翌寛永14年(1637年)10月政宗の御霊屋(おたまや、霊廟)を建立し瑞鳳殿と命名しました。
瑞鳳寺は、伊達家の菩提寺として同時期に創建された御一門格の寺院です。本尊は釈迦、文殊、普賢の三体で、平泉毛越寺より遷したもので、 境内には、忠宗公寄進の梵鐘、栄西堂、冠木門、茶室瑞新軒、花塚、伊達安芸の献灯、先代萩の亀千代、政岡、千松の像などがあります。

キラキラ号

(株)ホットドッグが主催する東京から名古屋、大阪、岡山、仙台、金沢などへのツアーバスです。路線バスとして認可を受けた高速バスに比べて かなり安く、東京〜仙台は片道3500円です。
ツアーバスは普通の観光バスを使うのが一般的ですが、キラキラ号の場合は座席の前後間隔が広くフットレストもついた 専用車両が用意されていて、安いながらもゆったりとした座席が特徴です。 (ウィラートラベル(株)主催の「ウィラーエキスプレス」など他社だともっと豪華な横3人掛けシート車もありますが、こちらはだいぶ割高です。)
ただし、夜行便が目的地に早く着き過ぎてしまったり(もっと寝る時間がほしいので困る)、目的地に着いても停車場所が見つからないと 見つかるまでなかなか降りられない(特に夜の東京駅)など、路線バスでは絶対にあり得ないことも多々あるので、それなりの注意が必要でしょう。

番外編・怪公衆便所

1ヶ月の水道代が10万円以上!どんな大きいトイレなのかと思いきや、利用客が少なく非常に小さなトイレ。その名は「琵琶首公衆便所」。 仙台市環境局は公衆トイレの事業費を例年約150万円くらいを見込んでいるので、この公衆便所だけで4割近く 予算を使ってしまうことになるそうです。漏水ではないかと調べるも原因は分からずじまい。
なお、近くの河原は、江戸期の評定所(裁判所)があったため評定河原と名づけられていて、処刑場もそこにあって武士階級の切腹が行なわれていたそうです。 だから、そこの評定河原球場なんかには切腹した侍の霊が出ると言う噂があるそうです。
琵琶首という名前の響きもあれですし、原因不明の高額水道料金はもしかしたら・・・

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